アカウント型保険の落とし穴
昨日の新聞掲載記事です。https://mainichi.jp/articles/20230713/ddm/008/020/099000c
かなり衝撃的な内容でした。「そうか。自分で守らなければ誰も助けてはくれないんだ」と思った 記事です。残念ながらネット上では有料記事になっていましたので、できるだけ続きを記載したいと思います。
【続き】・・・・・男性の契約では、保険料の払込期間中に死亡した場合は、保険金の受取人である妻に300万円と積立金を上乗せした額が支払われることになっていた。
利率変動型積み立て終身保険 の意味
男性が加入していたのは、生命保険の一種「利率変動型積み立て終身保険」。男性は、保険の名称に「終身保険」とあることから、300万円の死亡保障が一生涯続くと信じ込んでいた。しかし、契約書類を確認すると、払込期間満了後に死亡した場合は10万円程度しか支払われないと記載されていた。
終身保険と定期保険の違いは天国と地獄
生命保険には、契約後は保障が生涯にわたって続く「終身保険」と一定期間のみを保障する「定期保険」がある。男性の300万円の死亡保障は、実は掛け捨ての定期保険で、払込期間の満了時点で300万円の死亡保障期間が終了していたのだ。
アカウント保険とは・・・
男性が契約していた保険は一般的に「アカウント保険」と呼ばれる。
「貯蓄も保障もできる」「自由に保障の見直しが可能」。こんなうたい文句で販売されていたアカウント型保険は、2000年に大手生命保険会社が販売を開始して以降、各社が取り扱いを始めた。この保険は、貯蓄部分(アカウント)と保障部分(特約)の二階建て構造になっている。
契約者が支払う保険料は、まず一階の貯蓄部分に積立金として入る。これが保険の主契約となる。そして、二階部分の特約として、死亡、医療、介護など様々な保障を契約できる。特約の保険料は、貯蓄部分から振り替えて支払う仕組みだ。子育てや結婚、老後などライフステージにあわせて、一つの保険で特約保障の内容や金額を見直すことができる。
また、払込期間の満了後は、貯蓄部分に残った積立金を終身保険に移行することができるため「終身保険」の名称が付いている。
しかし、終身保険や定期保険に比べて仕組みが複雑で、分かりにくいというデメリットもある。貯蓄部分の大半を特約の保険金に充ててしまうケースが多く、貯蓄額がほぼ残らないといった問題も指摘されてきた。
この男性の場合、どうなったかというと・・・・・。
男性は60歳まで1年更新の掛け捨ての生命保険に加入していたが、21年前に生命保険会社からアカウント型への切り替えを勧められたという。
終身保険であって終身保険ではない
男性は「当時、終身保険への切り替えを検討しており、担当の生保職員にもその旨は伝えていた。名称に『終身保険』と入っているプランなので、疑問を持たず、勧められるまま加入してしまった」と振り返る。
男性の契約では、毎月の支払いは約2万3000円。そのほぼ全額を死亡保障などの特約に振り替えていたため、残る積立金は月121円しかなかった。
約款という契約書
契約約款には、払込満了後の保障は「積立金をもとに定まる保険金」とあった。月121円の積立金を基に算出した終身保険の死亡保障が10万円だったということになる。
裁定審査会
納得がいかない男性は「契約の仕組みを保険会社から説明された覚えはない」と主張し、満了後も死亡時に300万円を支払うよう要求した。
生保側が受け入れなかったため、男性は生命保険協会の裁判外紛争解決手続き(ADR)機関「裁定審査会」に審査請求をした。
しかし、生保側は「(男性が)一生涯にわたって一定保障額で保険期間が継続すると考えていたとしても、契約はそうではないことはパンフレットや申込書で説明している以上、錯誤は重過失によるもの」と主張。審査会は今年4月「約款上の問題はない」と認定し、裁定は終了した。(朝日新聞より抜粋)
・この男性が裁判所に訴えたかは今のところ不明。「裁判外紛争解決手続機関(ADR)」は、生命保険協会の裁定機関なので、公平性を保てるのかは疑問。
・生命保険の営業職員からすると、「主契約の積立金を低く設定すれば保険料を安く見せることができるので、売りやすかった」。
・ファイナンシャルプランナーは「保険を選ぶ時は保険会社の勧めだけに乗らず、契約内容を比較検討することが重要」と注意を促している。
・多くの生命保険会社は批判にさらされ販売 を中止しているが、一部の生命保険会社は今もなお取り扱いを続けている。